唯一無二!陶芸界の“異端児”が手がける独創的な世界観

県内外でファンを増やし続けている陶芸家 今村能章(いまむらよしあき)さんの工房にお邪魔させていただきました。今村さんが手がける奇抜で個性的な作品は、一度見ると忘れられないほどのインパクト。「ひと目でファンになってしまいました」という声もよく耳にします。

作品の見た目から勝手に「気難しい方なのだろうなぁ」と想像していたのですが、実際にお会いしてみて、そのギャップにホッ。取材前にはプロ並みにおいしいコーヒーを淹れてくださいました(この1年で最も心に残る一杯でした)。

「日本酒は、味わうために酒器の大きさや厚みなどがしっかりと考えられて作られていますよね。ワインも、香りや味わいを楽しむためのグラスが何種類もある。だからコーヒーも、豆の種類や個性を引き立てるためのカップがあっても良いんじゃないか…と思ったんです。」

コクのあるコーヒー、酸味の強いコーヒー、フローラルな香りが楽しめるコーヒー…。今村さんは淹れるコーヒーに合わせてカップを変えます。そしてエスプレッソカップに関しては、形状・厚み・重さなど30種類ぐらいパターンを作ったと言います。

「例えば、カップの口の厚みや形状が変われば、酸味や苦味、甘さやコクなど味覚や質感の感じ方が大きく変わります。実験を繰り返してみて、クレマが厚く濃度の高いエスプレッソを入れるためには、適した形があるということにも気づきました。どんなに味の良い豆で淹れても、それをしっかり表現するためには器はとても重要で…。理想のエスプレッソカップが完成するまでには5年かかって、その間にエスプレッソにとても詳しくなりました(笑)」と今村さん。

「陶芸をしている時間が楽しくて仕方がない」と話す今村さんの頭の中は、常に作品作りのことで一杯だそう。プライベートで出かけた先でも、作品作りのヒントを得ることが多いそうです。例えばこちらのドアノブカップは「ポルトガルの蚤の市で売っていたドアノブの触り心地がよくて、このままカップの取っ手に付けたら良いんじゃない?」とひらめいたのだそうです。

「例え“見切り発進”でも、自分自身で吸収したものをアウトプットすることが大事だと思う」と話す今村さん。誰かに弟子入りしたわけでも、沖縄の土を使っているわけでも、登り窯で焼いているわけでもありません。それでも“沖縄で作り続ける意味”はあるのか訊ねると「沖縄には好きな人がたくさんいるから」と答えてくれました。

そして、県外からの移住者も増えて発展しているように見える沖縄県ですが、圧倒的にアートはついてきていないと感じているそうで、「もっと沖縄のアートを活性化していきたい」とも話します。
 

行きも帰りも必ず立ち寄る那覇空港。心を奪われる人が続出中の今村さんの作品はDear Okinawa,でも積極的に取り扱っていく予定です。ただし、人気商品は入荷と同時に売り切れてしまう可能性も…。見かけたら、どうぞお早めに。

Photo&text:舘幸子