沖縄と言えば、ゴーヤーに泡盛に…シーサーですね。「魔除け」や「家の守り神」として門柱や屋根、玄関前に置かれているシーサーは沖縄のシンボルのひとつです。ですが、シーサーが設置されるようになったのは実は戦後のこと。
シーサーの原型となった(と言われている)のは、琉球石灰岩で作られた「石獅子(いしじし)」だそうです。もともと村落の入り口などに、災いを防ぐために設置されていたもので、沖縄県内各地で今でも130体以上の石獅子を見ることができます。
そんな石獅子に魅せられ、那覇市首里のギャラリー兼工房「スタジオde-jin(デージン)」でオリジナルの石獅子を制作する若山大地さんを訪ねました。沖縄県立芸術大学で彫刻を専攻された若山さんが石獅子に興味を持つきっかけとなったのは、那覇市上間の高台にある石獅子「カンクウカンクウ」でした。
上間村の守護神として祀られているカンクウカンクウを初めて見た時、大きな頭と眼力に衝撃を受けたと言います。若山さんは沖縄にこのような石文化があったということに感銘を受け、その後すぐに石獅子作りを始めました。
現在は石獅子のリサーチは奥様の恵里さんが、制作は大地さんが担当し、夫婦がユニットを組んで活動されています。
サンゴや貝殻など、沖縄の海に住む生物から生まれた石材 琉球石灰岩。性質は柔らかく、優しい風合いが魅力です。多くの気泡があるため細かい彫刻には不向きともいわれていますが、若山さんはそれぞれの石が持つ個性を活かし、手彫りしていきます。
ギャラリーには、前と後ろに顔がある「どっちもシーサー」や、ジュゴンを背中に乗せた「ジュゴン乗りシーサー」、コーヒー豆を背負った「コーヒー豆をのせたしし」、泡盛ボトルをかつぐ「シマーをのせたしし」など、ユニークな石獅子が並べられています。
お茶目で愛くるしく、人懐っこい表情をした石獅子たち。ゴツゴツ、ざらざらとした質感の石から彫られているとは思えないほど温かみがあって、私はそのギャップに心をつかまれてしまいました。
ひとつひとつ異なる表情をした、世界にひとつしかない石獅子。愛嬌ある表情が可愛くて、目が合うと思わずにっこりしてしまいます。疲れた時に心をホッとほぐしてくれる“癒しアイテム”として、デスクに置くのも良いかもしれません。
Photo&text:舘幸子