経営者対談

[写真:左:ゆいまーる沖縄(株)代表取締役社長 鈴木修司 右:ネイティブ(株)代表取締役 倉重宜弘]

沖縄の工芸品を企画・販売する「ゆいまーる沖縄」と、地域マーケティングを専門とするネイティブ株式会社の二社が業務提携し、那覇空港新ターミナル内にクラフト・ショップ「Dear Okinawa,」をオープンする。当事者である両社の経営者の二人が、この異業種コラボチャレンジの意気込みを語りました。

Q:「Dear Okinawa,」のコンセプトは以下のフレーズになりました。

「行きも帰りも立ち寄って、あなたの“沖縄”をひとつ見つけてください。旅で見つけた大切なものがあなた自身や誰かの暮らしをきっと少し変えてくれます。」

これについて詳しく教えてください。

倉重
かなり議論しました。コンセプトを決めるのは、やっぱり難しいですよね…。

鈴木
そうですね、ここが一番時間をかけて悩んだところですね。事業コンセプトはスタート地点であり、また常に戻るべき場所ですので。

倉重
Webサイトを作るときも、まずサイトのコンセプトを決めることが多いのですが、リアルのショップはまた違ったスタンスが必要でした。特にDear Okinawa,はこのお店自体が共同で、ひとつの作品を作る感じのものですので。

鈴木
“モノを売る”のはお店のひとつの要素にすぎなくて、買ったことによって、その人の暮らしや価値観がどう変わるかが大事だと思っています。“提供するのは「モノ」だけではない。すでにそういう時代になっていると思います。

倉重
そうですよね。これから、そのあたりの価値観が大きく変わっていくと思います。特に若い人たちの幸せの価値や尺度が、物理的なものだけによらないですしね。

鈴木
ゆいまーる沖縄では、沖縄の工芸品を販売するだけではなく“私たちがもっと知ってほしい沖縄”とお客様を繋ぐために、ワークショップやトークイベントを行っています。それから作り手のマインドの変化も大きな課題となっているので、つくり手の人材育成や工房運営の勉強会なども開催しています。ゆいまーる沖縄を通じて“Made in Okinawaの価値”を高め、提供していけるモデルを作っていきたいんです。

倉重
自分はずっとデジタルの世界のバーチャル側にいましたので、実際に現物を手にとることができる実店舗の必要性は以前から強く感じていました。同時に、今はネットがあれば世界中どこにいてもワンクリックでショッピングができる時代です。買う場所がものすごい勢いでオンラインに移行しつつあるんです。同時に面白いことに、デジタルの側も、よりリアルの場所を重要視してきました。Amazonが2018年にシアトルで実店舗「Amazon Go」をオープンしたのは象徴的です。リアル店舗が、ある意味「メディア」的な要素を備えて広がる可能性があると思います。そういう意味で、デジタルとリアルは、今まで語られてきた効率性を超えた融合が始まっているんじゃないかと思います。

鈴木
人との繋がりの大切さは、突き詰めると “本当の豊かさとは何か” ということも気づかせてくれますしね。南風原の店舗、ゆいまーる沖縄 本店<Strage & Lab>、ゆいまーるの「ゆい」には結ぶという意味があって、このショップを通じていろいろな繋がりが生まれるようにという思いが込められています。

倉重
確かに、いろいろなチャネルがある中で、人と人が直接繋がるリアルな場所は、ネットが広がるにつれてますます重要になって然るべきかもしれませんね。沖縄はそうかもしれません。
とにかく沖縄って特別なんですよね。何というか… ちょっと表現しづらいんですが、他の地域とは明らかに違うものがあると以前から感じています。

Q:それは、沖縄がリゾート地だからでしょうか?

倉重
それだけではないと思います。これまで長いあいだ沖縄に通ってみて私が感じていたことは、同じリゾート地でもハワイなどとはとは違い、まるで”パラレルワールド”のような感じがするなと(笑) これはあくまで個人的な意見ですが。沖縄に来るということは、特別な価値があるような感じがしていたんです。

鈴木
独特の精神文化が息づいているからでしょうかね…?廃藩置県後に琉球から沖縄になって近代化の影響は受けているのですが、昔から大切にしてきた自然崇拝や祖先崇拝など、目に見えないモノを今でも沖縄は大切にしています。その価値観が、沖縄のアイデンティティに繋がっているのかもしれません。
日本は戦後、物質的あるいは経済的な豊かさを追求してきましたが、私はそれと対極にある価値観、心の豊かさがこれからますます求められると考えています。
 

Q:工芸品の卸・小売事業をされている「ゆいまーる沖縄」と、地域メディア事業・地域創生支援ビジネスをされている「ネイティブ株式会社」ですが、お互いに異業種とコラボレーションすることをどのように思われていますか?

倉重
私達にとっては、ショップを運営すること自体がほとんど初めてで未知の領域ですが、このチャンスを頂いてから本当にワクワクしています。それに、鈴木さんは経営者としても大先輩なので、ご一緒することで、色々学ばせていただけることがあると直感的に思いました。また我々は全くの異業種で重なる部分がほとんどないので、お互いに良い意味で影響を与えることもできると思っています。

鈴木
自分は実はこの数年間、異業種とどんどん繋がっていきたいという考えがありましたので、全く違和感はなかったんです。というのも、同じ業界の人間同士で“業界の新しい価値”を創造していこうとしても、なかなか生まれにくいと思うのです。
沖縄の工芸業界にも那覇空港にも“新しい風”を吹かせたいという思いがあったので、異業種の人たちと組んでみたいと考えていました。
沖縄のお土産品は、何度も来てくださるリピーターに「なかなか買いたいものがない」と思わせてしまっているようですので、そういう状況からしても、多くの方に“もっと深い沖縄の魅力”を伝えていくために、異業種間の交流を深めることは必要なことだと思います。

Q:沖縄のクラフト(手仕事製品)について

鈴木
いま全国的に工芸・クラフトブームなのですが、その中でも特に沖縄の工芸品は知名度も人気度も高いです。私は長年この業界にいますが、これほど沖縄の工芸品が注目されるのは初めてかもしれません。

倉重
観光客も増え、新しいホテルもどんどん建設されています。沖縄に訪れる観光客は、年間1000万人(インバウンド300万人、国内客700万人)で、今後も増えていくと予想されています。
世の中的には工芸ブームのようで、沖縄の作家さんたちも活躍されていることは知っていました。最近では忙しくなり過ぎ、生産が追いつかないそうですね。

鈴木
ブームはいつか終わります。流行りやノリで新規参入した人や企業は去っていくでしょう。でも私は、ブームは悪いことだとは思っていません。長期的視点で価値を高める取組ができれば、その勢いを活かして成長できることもあります。

倉重
東日本大震災のあった2011年以降、沖縄は移住者がかなり増えました。その頃に移住された、若手のクラフト系作家さんも少なくないと聞いています。そういう流れもあって、近年ますますセンスやユニークさが際立っている作品をよく沖縄で見かけるようになりました。沖縄でで“カフェ巡り”をしている女性たちが、実は“クラフト巡り”も楽しんでるという人もいます。いま全国的にもクラフト作りに興味を持つ若者が増えており、この流れが加速していけば「いつか沖縄へ移住して作家になるという人生も良いかもしれない」と思ってくれる人が増え、移住定住促進にも繋がっていくように思います。このショップが、ある意味「クラフト作家の登竜門」になっていけば面白いなと思っています。
 

Q:今回は、空港という立地での開店ですが、どう思われますか。

倉重
出品のお誘いをした作家の皆さんは、“海外の人にもたくさん見てもらえるチャンスだ!”と、とても前向きにとらえていらっしゃいます。沖縄工芸の勢いを感じました。

鈴木
いろいろな国の幅広い年代、性別の多くの人が行き交う空港という場所は、Dear Okinawaの活動を通し、旅行客の価値観や、好みの傾向が見えてくるので、こんな面白い場所はありません。それをもって海外に進出していくことも出来ると思っていますし、クラフト業界にフィードバックをすれば、次の商品開発に生かせます。今後、那覇空港からいろんな方向に波及させたいです。
卸・小売事業をしているゆいまーる沖縄と、マーケティングを専門にしているネイティブさんが沖縄で組む意味が、まさにここにあるわけですね。

倉重
地域の課題は、まずは魅力を掘り起こすこと。そしてそれをその地域のファンとなる人たちにしっかりと伝えることです。それが経済効果になって返って。沖縄在住の方たちにとっては当たり前のようですが、沖縄という地域の魅力は、本当に無限大です。世界にここしか無いという魅力が溢れている、本当に豊かな地域です。私達は、そういう沖縄の宝を見つけて、新しい価値を加えて、世界中の人達に伝えていきたいです。これこそ「地域マーケティング」そのものです。
「Dear Okinawa,」の可能性も無限大です。これから様々な魅力を持った企業や作り手の皆さんと、その可能性を追求していく企画をどんどん仕掛けて行きたいと思っています。沖縄クラフトツアーや、イベントなんかもできるといいなと。沖縄の魅力を一緒に世界に広めて行きたいと思って頂ける皆さんには、ぜひお声がけいただければ嬉しいです。

鈴木
そうですね。私は沖縄に移住し、ここで生きる者として、沖縄の文化、ここで暮らす人々の中に息づく価値感、想いを、この事業を通して継承していければ、と思っています。

倉重
ぜひ一緒に頑張りましょう!

取材・文:舘幸子