「楽しいか、楽しくないか。製作する上で大切にしている基準です」

ガラス作家の嶺井 海音(みねい かいね)さんが作り上げる作品は、柔らかなフォルムと優しい雰囲気が魅力的。本来“冷たい”印象のあるガラスですが、「伊豆味ガラス工房うみのおと」に並ぶガラスはどれも温かみが感じられ、どことなく懐かしさが漂っています。

「もともとモノを作ることが好きでした」と話す嶺井さんがガラスに興味を持ち始めたのは、中学2年生の時。琉球ガラス工房のインターンシップへ参加したことがきっかけでした。
「高温で焼かれていくガラスや、職人さんたちの手さばきに感動したんです。高校ではガラスを学びたいと思っていましたが、沖縄には希望のコースがなかったので、一番ジャンルの近そうな陶芸コースに進学しました。結局、陶芸とガラスは全然違ったんですけど(笑)」

高校卒業後は、インターン先の「やんばるガラス工芸館」や「琉球ガラス匠工房」で修行し、その後、県外へ。「マンネリを感じ始めていたんです。沖縄のガラス工房は分業体制なので、生産量が多い場合は効率的ではあるんですけど、このまま同じ環境に居続けたら、自分の作品が作れる日は来るのだろうか?という不安もありました。ずっと沖縄の工房にいたので、視野を広げるためにも、一度県外へ行こうと思いました」と嶺井さん。現代ガラス界を代表する伊藤けんじ氏の下で2年半修行した後に沖縄に戻り、2020年7月に「伊豆味ガラス工房うみのおと」を設立しました。

吹きガラスには、空中でガラスに息を吹き込んで成形する「宙吹き(ちゅうぶき)」と、成形時に型を使う「型吹き(かたぶき)」2種類の技法がありますが、嶺井さんは主に宙吹きで製作を行います。使うガラスは、融点の低いドイツ製。

「琉球ガラスの定義についてお客様から聞かれることがあるのですが、僕は沖縄で制作している事が琉球ガラスだと伝えています。この地の環境や、ここで感じたものをガラスで表現することが沖縄のガラスになっていくのだと思っていて…」と嶺井さん。

琉球ガラスと海外の技法を取り入れ、その日のガラスの状態を見極め、感覚を頼りに、厚さの微調整を繰り返しながら仕上げていきます。
「工房を設立して2年半が経ち、だいぶ安定してきました。そろそろ自分の作品づくりにも取りかかりたいですし、作れるモノの幅をもっと広げていきたいです」

嶺井さんがひとつひとつ丁寧に仕上げたガラスは、同じように見えても、厚み、模様、表情が微妙に異なり、光の入る角度によって違って見えるのも魅力です。
ぜひDear Okinawa,で手に取ってご覧ください。
伊豆味ガラス工房うみのおと
https://www.instagram.com/uminooto.glass/
Photo &text:舘幸子